オートクチュール、アルタモーダの野菜たち

-すべては、彼との出会いから始まった。

それは、「ルッコラ」「ズッキーニ」が日本で誰もが知る野菜となる、一昔前。
1997年の春、1人の青年が鎌倉市農協連即売所を訪れた。

「ちょっとお願いしたいことがあるんですが…」と、彼はきりだした。
話を聞くと、「自分はフランスでシェフをしていたのですが、その当時よく使っていた野菜が日本にはないので、栽培していただけませんか?」とのこと。
さらに話を聞くと、「この市場の色々な農家さんにお願いしてみたのですが、なかなか良い返事を頂けなくて…」と続く。

当時、まだ若かった私(現在当園代表)は、鎌倉の特産物・代名詞になるような野菜を求めて、アナン・コーポレーションのアナンさんに依頼をうけ、国内で初めて「レンズ豆」の試作に取り組んでいたこともあり、「新品種の野菜づくりは、どう育っていくのか、すごく楽しみなので、お引き受けいたしますよ!」と快諾し、そのシェフが、わざわざ南仏ニースの生産農家にお願いし譲りうけたという種を、お預かりすることとなった。

そのシェフの話では、ズッキーニの種類だが、日本で出回り始めた種類とはまったく異なり、カボチャより大きくなるという。
「???」
まったく理解できなかったが、とりあえずその年より、栽培の試行錯誤がはじまった。
それから、なんとか3年目くらいで納得のいく商品となった。

ただ、どう言って販売していいものかも解からず、かの若きシェフに聞くと、「名前はクルジェット・トロンペット」や「クルジェット・ニソワーズ」と呼ばれる南仏特有の品種で、若いうちはズッキーニと同じく調理し、完熟したものはスープにすると大変おいしい。」とのこと。

そこで、言われたように、様々なシェフ等に宣伝してみると、確かに「美味い」との感想がくる。ただ、名前が長いフランス語で一般のお客様には「なじみづらい」ということで、見ての通り直球勝負で「オレンジズッキーニ」と命名した。

これが、今でこそ「鎌倉野菜」の代名詞の一つとなった「オレンジズッキーニ」の原点であり、毎年一番成長の良かった個体から種を採取し、これまで15年以上ずっと、種を絶やさず栽培し、守り続けてきている。

そう、この若き1人の青年こそ、当時鎌倉ではまだまだ少なかったフランス料理店の先がけ「ガイア」の料理長、「小島景」シェフであった。

ニース・モナコで料理人としての基礎を築いた彼が、南フランスでの生活で、すっかり身につけた“市場通い”。
それは「食材と真剣に対峙し、その食材の力強さを活かす」という哲学の下、銀座の「ベージュ アラン・デュカス 東京」を任されている今も、毎日実践している日課である。

「市場」は、彼にとって、「コミュニケーション」と「インスピレーション」の場であるという。
「こんなものが欲しい」とか「このサイズで欲しい」等、話を受ければ、今度はこちらが「どうやったら可能か?うーん・・・」、「じゃあ、こうしてみましょう!」等、提案する。
毎日がこのくりかえし。
「市場」は、私たちにとっても「コミュニケーション」と「インスピレーション」の場。
厨房で野菜と対峙する彼らは、私たちの「羅針盤」でもあり、野菜づくりの「先生」でもある。

だが、彼らプロの中のプロが求める野菜は、当然日本にないことも多い。
では、どうするか…まだ見たこともない「野菜」の情報をもとめて、私は1人、飛行機に飛び乗り、パリ・アルル・ニース・モナコ・ローマ・ミラノ・シチリアへと向かい、現地の農家に会いに行くのである。

同じ大地の上で、自然と、野菜と対峙する姿勢をもつ人々とは、言葉の壁を越えて、なにか通じるものがある。
国境を越えた彼らもまた、「羅針盤」であり、「先生」である。

当園代表取締役 加藤宏一

オートクチュール、アルタモーダの野菜たち

約6000坪の畑でつくる野菜は、シェフや料理人の皆様方から、日々、「栽培リクエスト」を頂きながら、新しい価値・新しい商品開発を進めています。
当園では、年間200種類を超える野菜を生産しており、限られた栽培面積の中で、究極の少量多品目生産を行なわなければならないため、ときには、主要なお取引き先のシェフや料理人の皆様方の御意見を優先して栽培・販売を行うこともあります。また、気候や風土の影響から、予定よりも時期が早まること、遅くなることもありますが、自然の理法に従いながら、そのときそのとき最大限の野菜づくりを行い、皆様方がプレート(お皿)に四季を彩るお手伝いを致します。

お皿に合わせた野菜(例:小指サイズの〇〇)など、「こんなものが欲しい」「このサイズで欲しい」といったリクエストがございましたら、まずは、当園代表までご相談ください。
当園では「お客様から求められる野菜」にこだわり、丹念に育てていきます。

これまでに販売してきたお野菜・商品例:

旬を彩る個性あるお野菜

各野菜の写真をクリックすると、それぞれの野菜一覧を見ることができます。
ぜひクリックしてご覧ください。

「鎌倉-野菜園」オリジナル商品

「オレンジズッキーニ」

今でこそ鎌倉野菜の一つの代名詞となりましたが、もともとは「クルジェット・トロンペット」や「クルジェット・ニソワーズ」と呼ばれる南仏特有のズッキーニの一種を畑で完熟させた野菜(クルジェ)です。その中でも、当園がネーミングした「オレンジズッキーニ」の名を名乗れるには、2つの大きな基準があります。

それは、「未熟すぎず、過熟させすぎない」ということと、「鮮やかなオレンジ色」であること。

15年を超える栽培経験を持ってしても、すべての収穫物が、この条件をクリアできるかといえば、そうではありません。だからこそ、当園では必ずカットしたものを商品とし、中の「熟し具合」・「鮮やかさ」をお客様に確認して頂いてから、ご購入頂いています。
時には色の良くない類似品があるそうなので、購入時にはご注意を。

「赤サラダからし菜」「サラダからし菜」「グリーンフリル」「紅芯大根」

これらも今でこそ鎌倉野菜の一つの代名詞となりましたが、その始まりは埼玉県さいたま市にある「トキタ種苗」との出会いでした。

当園代表の兄弟が通っていた埼玉県行田市にある、テクノ・ホルティ園芸専門学校(埼玉県行田市)の当時の同級生・佐久間君が卒業と同時に、平成3年「トキタ種苗」に就職。
その2年後、彼より「新品種の野菜ですが、試作用に」と、いくつか頂いた種の中に、それらがありました。

当時の「からし菜」と言えば、一般的に「漬物用の菜っぱ」で、サラダで頂くなどという発想はみじんもなかった時代に、「新しいものを柔軟に取り入れる創造性豊かなトキタ・スタイル」を引っ張る時田社長ならではの商品開発でした。
中国より、「紅芯大根」を日本市場へ、いち早く紹介したのも「トキタ種苗」の功績です。

そういった意味では、現在の「鎌倉野菜」と呼ばれている様々な新しくて珍しい野菜の源流は、「トキタ種苗」にあるのかも知れません。
我々「レンバイ」の農家は、「トキタ種苗」に足を向けて寝れませんね(笑)。

「サラダ・ミックス」

今でこそ鎌倉野菜の最たる代名詞となった「サラダ・ミックス」。
そのはじまりは、平成17年まで、さかのぼります。

その頃、先の「赤サラダからし菜」、「サラダからし菜」、「グリーンフリル」に加え、「レッドマスタード」「グリーンマスタード」「ルッコラ」「サラダ水菜」など、多種多様なサラダ用の葉物類が店頭に並んでいました。
飲食店のお客様であれば、すべての品種を購入しミックスサラダにすることができましたが、個人のお客様では、すべての品種を購入するのに1500円以上もかかり、小人数の家族では、使いきれませんでした。

そんなある日、当園スタッフより、手間はかかるがお客様の立場を考えたら「少人数の家族でも食べきれるように、数種類の野菜を合わせて1束にしたらどうか」というアイデアが出ました。

結果は御存じのように、個人のお客様から絶大な支持を頂いており、近年では「このお店のサラダ・ミックスは歯が痛くなるぐらいの鮮度で、組み合わせもまた、丁度いいよね」と、プロのシェフも指名買いして下さるほどになりました。
大変ありがたいことです。
ネーミングもわかりやすくてイイでしょ!?

そういえば、平成18年の12月に料理・雑貨 スタイリストの伊藤まさこさんが雑誌「LEE」の取材で来られたときは、その新鮮さとアイデアに絶賛!
「どれくらい、この野菜が魅力的だったかと言うと、私は早く帰って料理がしたい。うずうずしている!」と語られていました。

「温野菜セット」

こちらも、鎌倉野菜の最たる代名詞となった「温野菜セット」。
そのはじまりは、平成20年まで、さかのぼります。

社員研修として、毎月お取引先のレストランをスタッフ全員で訪ねていたその頃、横浜・みなとみらいの「リストランテ・アッティモ」(福山オーナー)で、私たちが育てた鎌倉野菜の「バーニャカウダ」なるものを初めて頂き、衝撃をうけました。

その場で、スタッフみんなで盛り上がり、「鎌倉野菜のバーニャカウダセット」として、色とりどりのカット野菜をセットにして販売してみては?という、アイデアが出ましたが、さすがに一般向けにはなかなかまだ浸透していかないのではということで、その頃ブームになりつつあった「温野菜」のセットとして販売しよう、ということになりました。その後のヒットぶりは、皆さんの知るところです。

「サラダセット」

準備中

「イタリアン・サラダセット」

準備中

※これら以外にも、当園が源流となって、皆様にご愛顧頂いている新しい野菜やアイデア商品はまだまだありますが、最近は似たような類似品がでまわっているそうなので、よく品質をお確かめのうえ、ご購入下さい。

「鎌倉」と「ニース」のかけ橋となる野菜

ニース・モナコで数々の修業を積まれ、現在は銀座「ベージュ アラン・デュカス東京」の総料理長として腕を揮う小島景シェフ。
私ども「鎌倉-野菜園」に、「オレンジズッキーニ」の原点となるニースの野菜「クルジェ」を教えていただきました。

また、外国人として最年少28才で本場フランスのミシュラン一つ星を獲得した、ニース「KEISUKE MATSUSHIMA」のオーナー松嶋啓介シェフ。
彼からは、「市場の重要性」や「食が観光資源である」ということを教えていただきました。

ともに居場所は違えども、お二人とも間違いなく、「鎌倉」と「ニース」のかけ橋であり、「サムライ」です。

これからも、このお二人をリスペクトし、またインスパイアを受けながら、「クルジェ」につづく「鎌倉」と「ニース」のかけ橋となる第2、第3の野菜たちを育て上げていきたいと思います。

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